「さあ、お互い、仲良くどうぞ。愛の告白でも構いませんよ。」と司会者。観月はネクタイをグッと上げ、仕事モードに気持ちを切り替える。「こんにちは、紳士さん。」と通にあいさつをして、「もちらこそ、子猫ちゃん。」と余裕を見せる。そして司会者が、観覧客を振り返ると、女性たちの目が観月のファッションに向いていると悟り、「皆さんは、観月さんのファッションも気になるところでしょう。今日の観月。」というと、観月は自慢げな姿も見せず、とても穏やかに、センスをひけらかさないように気をつかって、「今日はチャコールグレーのブラウスに、ピンストライプのタキシード、ダークブルーのベストに、ウールのボルドーのネクタイ、ツイードのハンチングで、全体的にトーンを合わせて、僅かにずらしたグラデーションで、遊んでみました。靴はラインストーンをあしらったピンヒール。女性らしく、女性の強さを。」とくるりと回った。すると、スタジオ全体に拍手が巻き起こった。通は、「何がファッションだ。」トイって、座った観月のアトに立ち上がり、「私はスタイルは問題にしません。人の大きさは心です。それに汚い姿をしている人は、身なりでごまかさない、自信のある人間、とも言います。」と言い放った。観月は「それは汚い、というより、コロンボ刑事みたいなことを言っているのでしょう。それはあくまでも役柄。私が言いたいのは、ファッションをこぎれいにすると言うことで、コンサバでしょう。コンサバにまとめると、人当たりはイイワよ。でも、あなたも、人前に出る前に本は読んだみたいね。でも、あなたは汚い。つまり、服でアピールしない人、ということが正しい。でも初対面の人にその格好だ何て、礼儀知らずもいい所。」と言い返すと、また拍手の渦。しかし、通は、そこをつく。「僕には彼女がいます。ユーモアで楽しませています。こういってしまいました。或る女性はいった、「ねえ、20代と言ったら、イロイロな人と恋をするでしょ。でも私は、あなただけに捧げてきた。それをいまさら。」「ペニスの宿と言った事か?」とある男。そしてある女は、「愛情や優しさはどこへ?」とイッタ。そしてある男はハッキリ言う。「それは別れてからわかることだろう、人生は切ない。後からの後悔こそが、哀れな私たち人間の所業さ。」というと、観覧客は静まりかえり、その後、ある人は拍手して、ある人は目がきつくなった。それを観ていた景は、通をどうにか失敗しないでと、頭をたたいてストレスを感じていたことが発散を要した。「そしてそれは、売れない作家に彼女がいうるということが、その証です。しかし、清水さんは、カネを稼いでは、服を買い、作家の本筋を踏み外し、とにかく皆に理解されやすい、共感を得安い、誰もが喜ぶ、というモノで、誰もがそうあってほしいと思いつつも、や、作家の本領、良きアイデアのもととなる、考えを提供し、時には思いも浮かばないような答えを出してあげる、というう皆さんへの奉仕を怠っている。本は売れるが、何の役にも立っていない。ただ楽しませるだけ。理想を追い求めている。それに庶民にはできないことを言っている。」観月は「あなたはおかしい。彼女を楽しませているというのに、私の本を読んだ人を楽しませているだけということはおかしいわ。誰でも一歩は踏み出せます。明日からでも、いまからでも。できないことはないと思っています。」「用を足してトイレから出てくるときも?」「もちろん。」「それは必然的に一歩を出します。」「…。」観覧客は笑い、観月は悔しがる。やられたわ、と。「あなたの本の女性像は、あまりにも高い。僕の彼女のような、もう何年も服も買っていない買えない、苦しい生活の女性には到底無理な話。不可能な女性像を描いている。読んだ女性は、そのうち、気分がめいる。これは単なる理想であって、現実生活では演じでもしなくては、いや、ウソでもつかなくてはいられない話。」「そんなことないわ。」しかし、観覧客は静かだ。観月の言葉にも反応はない。「でも庶民は、そんな服は買えない。僕を見てください。これでもというより、ペンと紙さえあれば、ハダカでも作家です。僕の身なりはそれでも皆さんに不快感を与えますか?」「つまりこうね。あなたは意外にも計算高い。あなたがみなさんより劣っているという人の方が、皆さんに受け入れられやすい、と。」「違います。僕は何も楽しめない、面白くない本を書いてきました。しかし、皆さんの心の価値観を変える、そういう皆さんの心に違和感を与える作品を書いてきました。僕と清水さん、どちらが作家らしいでしょう。オシャレを気にするモデルまがいの作家と、売れなくぼろを着ている何か心に感じたことのない気持ちを与える、僕ではないでしょうか。」と訴えると、拍手が巻き起こった。景は、その場で飛びはねて、バタバタと足踏みをして回りながら、全身で喜ぶ。「信じられない。すごいわ!!」そして、観月は慌てる。「じゃあ、勝負しましょう。あなたの言葉、飲むわ。」と感情的になった。通は無表情にして、「僕の言葉に負けましたね。売れない作家の今の現状が、今の心を動かした。」「私にも言わせてください。私はどんなおしゃれをしても、心は変わっていません。それは、ファッションを楽しむ、という心は、弾みますが、それは信じてください。」というと、すると、スタジオからブーイングが起こる。通は丁寧に、腰を90度に折り曲げて、お辞儀をした。「テーブルでの夜の食事をすることは当然ですが、その後の関係もテーブルです。四角くて、固くて、時々のワイングラスを置いても決して倒れない、ベッドの上で食事をします。彼女の体を。愛しています。」とユーモアを言う。
そしてテレビで観ていた倫子は、大笑いで、バランスボールを抱きかかえ、喜んでいる。「んっもう、通、思いっ切る抱きしめちゃうわ。ぐるぐる巻きにしてあげる!」そして仰向けになり、天井を仰ぎ、手足をばたつかせ、通のことを想像すると、汗バンできた。そして冷蔵庫へ、お気に入りのアイス、キャラメルアンドバニラを取りに行く。「これで私とデートを目撃されたら、私も売れるわ。ゴメンエ、通。使いッパシリにして。」
続く